[レポート] AWSを活用したスポーツ番組制作/配信事例 #interbee2020
こんにちは、大前です。
本記事は、Inter BEE 2020 ONLINE のセッション「AWSを活用したスポーツ番組制作/配信事例」のセッションレポートです。
セッション情報
セッションタイトル
AWSを活用したスポーツ番組制作/配信事例
セッション概要
番組制作や配信に於いても時間/場所を選ばないクラウド活用が進んでおります。スポーツに関してはAWS Media Service等の各サービス利用だけではなく、各AWSパートナーがスポーツに特化したソリューションの利用も広がっております。このセッションではAWSを活用したスポーツ番組制作/配信事例を最新の情報と共にお伝えします。
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該当のセッションはこちらから視聴が可能です。
スピーカー
- 関 孝弘 氏
- アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
- エンタープライズ統括本部 通信・メディア営業本部 ソリューション・コンサルタント
- 田中 彰一 氏
- 株式会社テレビ朝日
- 技術局技術運用センター
- 河合 恭伸 氏
- 株式会社Jストリーム
- プラットフォーム本部 プロダクト推進部 プロダクト推進課
- 池田 真理 氏
- 株式会社Jストリーム
- 営業本部 メディア・コンテンツ推進部 1課
- 須藤 隆 氏
- スポラ株式会社
- 代表取締役社長
- 大林 正典 氏
- スポラ株式会社
- 取締役 CTO
セッションレポート
放送品質を求めて ~AWSを使用した全米オープンゴルフでの国際映像伝送への挑戦~
- 伝送に関する背景
- 今までは海外からのスポーツ中継は衛星通信や光ファイバー網を利用してきた
- 課題として、回線は安定しているが高価、かつ専門知識が求められる点があった
- 場合によっては 1000万近くかかる場合も
- クラウドを使用した映像伝送
- 報道番組でもインターネットやモバイル回線を使った中継は主流になってきている
- インターネットなので当然回線の安定性については不安がある
- 不安定なインターネット区間を短くする方法はないのか、模索していた
- AWS ELemental MediaConnect の利用
- AWS のサービス
- 信頼性、安全性の高い映像伝送が可能
- Zixi プロトコルを使用
- 全米オープンゴルフの中継
- コロナの影響でスタッフの数が最小限に
- 中継車も利用しない
- 日本に映像を届けるための方法として、上記 MediaConnect を使用
- 構成
- 全米オープンゴルフから AWS を経由して日本に映像が伝送される
- ロンドンのゴルフ場で撮影される
- ホスト局から 7回線を受け取り、エンコーダーで映像を圧縮し送出
- Zixi Feeder を現用・予備の 2系統用意し利用
- AWS 上
- AWS のロンドンリージョンから東京リージョンに伝送
- Zixi プロトコルで伝送
- 7回線を伝送
- 東京リージョンに届いた映像は VPC を経由してテレビ朝日に届けられる
- AWS とテレビ朝日間の回線には DirectConnect を利用
- Decoder としては Zixi 対応のもの、RTP 対応のものの 2種類を用意
- 検証結果
- 短期間で構築が可能
- 2ヶ月ほどで構築ができた
- 国際伝送に成功
- 7つの回線を日本まで無事取り込めた
- 安定した伝送を確認
- Zixi プロトコルによる誤り訂正
- AWS 上でのパケットロスもほぼ発生しない
- 低コストを実現
- 衛星通信を使う場合の 1/100 ほどに
- 短期間で構築が可能
- パケットロスの発生状況について
- 定常的にパケットロスが発生するが、Zixi プロトコルを使用することによりほぼ全てが復旧される
- DirectConnect の状況
- パケットロスが 1日通して 0であった
- 今後に向けて
- 現地での安定した回線の手配
- 機能追加
- ENCODER/DECODERの相性
- 通信キャリアとの連携
- リモートプロダクション実験
- MediaConnect で伝送された映像を TVU Networks 社製の TVU Producer へクラウド上でダイレクトに入力
- オンプレの設備が不要に
- MediaConnect から MediaLive, MediaStore に枝分かれさせている形
- 検証結果
- クラウド上で SW・配信が可能に
- クラウド上で複数の映像入力やスイッチ、配信が可能に
- 場所にとらわれない運用が可能になった
- クラウド上で SW・配信が可能に
- 今後の展望
- ローカル回線の安定化
- リモートプロダクション
- スポーツでの伝送や分岐
- クラウドの各システムとの連携
- 今までは IP 回線の利用やクラウドの利用が難しいと認識されていたが、今回様々な事が実現できた
- 将来は今できないとされている事も実現できるようになっているのではと思われる
『テレワーク時代』における新たなスポーツライブ配信の仕組みと事例
- コロナ情勢におけるインターネット LIVE 配信
- リアルなイベントがインターネットに移ってきている
- いくつかの課題が存在する
- エンコード・配信
- 人手をかけられない一方で映像は増加していく
- 画作り
- 現場にいけない、テレワーク環境での作業が求められる
- エンコード・配信
- LiveShell x J-Stream Equipmedia を利用したエンコード&配信
- Equipmedia とは
- ライブ配信や VoD 配信機能がついているサービス
- 岩手朝日テレビ様との取り組み
- 高校野球の中継
- コロナの影響で配信会場が増加
- Equipmedia と MediaLive の組み合わせによって課題を解決
- 各会場の LiveShell から送信される映像を MediaLive で受け取り、各サイトに配信を行う
- メリット・展望
- SNS 配信の要望やフィードの管理も可能
- 類似案件に流用も可能
- 今後は LiveShell を Elemental Link に置き換えられないか検討
- Equipmedia とは
- Grabyo を利用した LIVE 映像制作
- Grabyo とは
- クラウドベースのビデオ制作・編集支援を行うプラットフォーム
- ブラウザベースで利用できるため、ハードウェアの用意等が不要になる
- チーム編集に最適・作業も効率化
- 3つの機能がある
- Producer
- ライブ映像の加工
- Studio
- 動画の即アップ
- Editor
- 動画編集
- Producer
- Producer についてピックアップして説明
- 映像ソースを RTMP で受け取り、適宜グラフィックやビデオの挿入を行う事が可能
- 編集・加工した映像を配信サーバーに送出
- Grabyo を使用したスポーツ配信現場の紹介
- 画面上部に入力されている映像と編集後の映像が確認できる
- 別の映像を選択し、挿入する事が可能
- 上記のような操作をブラウザベースで実施する事ができる
- eSports のイベントで使われた
- 各プレイヤーの映像やゲーム画面を MediaLIve 等を通して Grabyo に取り込み、編集を行なっている
- Grabyo とは
- 今後求められる要件
- いつでもどこからでも作業ができる仕組み
- 映像編集/チェック/公開作業のグループでの効率性向上
- より簡単にスピーディーにライブ配信ができる仕組み
国内スポーツビジネスを変革する インターネットインフラ活用 ~二人でも構築できる動画配信基盤の概要
- SPORA について
- スポーツエンターテイメントのインフラを支援する会社
- 国内スポーツにおけるビジネス的な背景
- 公共の施設を使わざるを得ない国内のスポーツ興行事情
- 国内のスポーツ団体は自前のスタジアム等を所有していない
- あくまでも公共の施設であるため、興行期間中しか使えない
- 本来は様々な設備を毎回持ち込む必要が発生してしまっている
- 季節労働者となるスポーツビジネス従事者問題
- レギュラーシーズン中しか業務が発生しない
- ナレッジノウハウの属人化
- スポーツアナリティクスに偏る IT リテラシー
- ネットワークインフラの利用により、上記の解決を目指す
- 公共の施設を使わざるを得ない国内のスポーツ興行事情
- バレーボールのプロリーブである Vリーグに関わっている
- V.TV という自前で撮影や配信等を行なっていたりする
- V.TV は AWS で構築している
- 2016年に eSports の配信プラットフォームを構築
- 2018年から V.LEAGUE TV がスタート
- 全国で試合が毎週末行われる
- 会場毎にスピーディーな構築・撤去が求められる
- 既存の技術の組み合わせでイノベーションは起こせる
- 運用のヒューマンエラーを減らすため、なるべく自動化を行う ー 調達の速達性より、当初から AWS の利用は方針に含まれていた
- 費用対効果を考えての投資額調整と最初から考えなしの蛇口閉塞はしてはいけない
- Vリーグの業務について
- 最初はアーカイブ業務
- 過去の試合を Elastic Transcoder を使用して変換処理を実行
- CMS を自作した目的
- 人間が動画変換を手元で行う事も可能だが、手作業にはミスが発生する可能性がある
- なるべく人力での作業を避ける形を実現するようにした
- 2018年から Vリーグの動画配信サイトを運用開始
- 当初は EC2 + RDS の構成でスタートした
- 求められる要件が増えていった
- 全映像を東京のスタジオに集約し、編集後にライブ配信する
- 1部リーグについては V.TV 上で映像制作が求められる
- Web 側の要求
- アクセスの急増に対応できるプラットフォームが求められていた
- コンテンツの有料化
- オンプレ側で集約した映像を Wowza on EC2 で受け取り、CloudFront 経由で配信
- NTT NGN を利用して各会場から VPN を貼る
- 各会場のカメラから直接センターにあるスイッチャーに映像を伝送する
- すでに Wowza がインストールされた AMI が用意されているため、構築が容易
- 2020/21 シーズンからは
- ライブ配信の試合数が大幅増加
- 視聴体験と画質・解像度のさらなる向上を求められる
- 映像スイッチング拠点を増設
- AWS からのデータ転送量の課金額が増加してきた
- 増え続ける過去試合のアーカイブ保存先問題
- オンプレに保存していたが様々な問題が発生してきた
- 解決策
- AWS Elemenntal の利用
- MediaLive, MediaPacakge といったマネージドサービスの利用
- 必要な分だけサービスを生成できる
- MediaLive, MediaPacakge といったマネージドサービスの利用
- オンプレミス環境の見直し
- Elemental Live の導入
- DirectConnect の利用
- トラフィックの分散
- 過去のアーカイブ映像は同時視聴数が少ない
- オンプレから直接ユーザに配信する事で AWS のデータ転送量を削減
- CloudFront の利用
- 過去のアーカイブ映像は同時視聴数が少ない
- ネットワークの再構築
- AWS Elemenntal の利用
- 今後の課題
- メインの課題はトラフィックの増加
- 対処療法になりがち
- 映像サービスは通常のネットワーク設計とは少し考慮する点が異なる
- 動画のデータは増え続けるため、これに対応するためのインフラを構築する必要がある
- リアルタイム性の追求
- 本番配信はテスト配信で見えなかった問題が発生しがち、準備は念入りにする事が大切
- メインの課題はトラフィックの増加
スポーツ番組制作/配信に欠かせない要素
- 必要な時に必要なだけ利用できる俊敏力
- 場所を選ばない機動力
- 関連システムとの連携力
- 上記は AWS を使用する事で実現が可能
おわりに
Inter BEE 2020 ONLINE のセッション「AWSを活用したスポーツ番組制作/配信事例」のレポートでした。
MediaConnect x Zixi の利用によって、パケットロスがほぼなくなったという話はなかなか興味深かったです。
また、昨今の映像配信業界に求められる要件にどう対応していくのか、各社の考えなどが伺えて非常に勉強になりました。
以上、AWS 事業本部の大前でした。